2008年9月24日(水)「ひととき」『朝日新聞』生活面

私より かわいい?


 「1人じゃ恥ずかしいから」と夫(40)が言うので、先日地元で行なわれたニューハーフタレントの椿姫彩菜さんのサイン会に同行した。


 独身時代、私との待ち合わせの場には8割がた遅れて来たのに、髪を整えヒゲをそり、30分前には会場に着くほどの準備万端ぶり。早々に椿姫さんの著書を買い求めに列に並び、食い入るように本を読み出す。あっけにとられた私と3歳の息子はそっとその場を離れた。


 会場から出てきたホクホク顔の夫は「彩菜ちゃん、ものすごーい手柔らかかった。ものすごーい可愛かった」とまくし立てる。本には「○○さんへ。彩菜」とハートマーク付き。「よかったね。うれしいね」と私は大人の対応をした。


 考えてみれば、歌舞伎の女形やニューハーフの皆さんは「理想としての女性」が凝縮されていて、市井に生きる女性より夢のある存在だ。夫はそんなところに惹かれたのだろう。実際私からみても、椿姫嬢はふんわりチャーミングだった。でもね、私に彩菜ちゃんみたいになってほしいというなら、君も宝塚の男役みたいに麗しい紳士になってくれないとね。


 帰宅しても夫の興奮は増すばかり。会社へ本を持って行き、見せびらかすつもりらしい。面白いことになりそうなので、あえて止めないことにした。皆様、血迷う40歳を温かい目で見てやってくださいませ。



奈良市 **** 主婦・34歳


朝日新聞生活面「ひととき」2008年9月24日 より)

*先日『ならファミリー』でひらかれたイベントの感想でしょうね。なんだか微笑ましいですね:)